MRIとはどんな診断装置?
| Q 脳ドックでMRIという診断法があります。ベッドに横たわって装置に入るのはCTと似てますが、MRIとはどんな診断装置なのですか | A プロトンの磁気から断像画像を得る。エックス線や造影剤を使用せず安全性が高い |
■ 事故で頭を打ったときなど、CT検査をした経験のある人は多いはず。脳や全身を輪切りにして
画像化するCT(Computer Tomogrphy:コンピューター断層撮影法)は、臨床画像診断に革命を
もたらしたといわれます。ところがその上をいく画像診断装置として期待されているのが
MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴映像法)です。
●分子の運動状態を反映
CTとMRIの違いは。
CTは人体を横断する一平面に対しいろいろな角度エックス線をあて、それをコンピューターで
再構築して画像にします。一方、MRIは放射線を使わないので安全性が高い。
造影剤を使わずに血液やリンパ液などの流れが画像化できますから副作用もありません。
また、エックス線撮影のように骨に邪魔されることがなく、脊椎や脊髄、軟骨などがきれいに撮れます。
エックス線など従来の診断法ではものの形を見て診断していますから、病気が進んだ状態でないと
見つからず治療も難しいのですが、MRIなら代謝物質の濃度分布や分子の運動状態などを反映した
画像が得られますから、新陳代謝や血流が悪くなった段階から早期の診断ができます。
●64メガヘルツの高周波磁場をかける
MRIのしくみは。
簡単に言うと、人体の各細胞に含まれる水素原子核(プロトン=陽子)の磁気性を利用しています。
よく人間の体の大部分は水だといわれるように、細胞の七割にはプロトンが含まれています。
プロトンは、コマのように軸をもって回転する小さな棒磁石にたとえられます。ふだんこのコマは
いろんな方向を向いて地球のように自転していますが、コイルに入れて静磁場をかけると、同じ方向を
向いて首振り運動始めます(図の@)。このとき首振り運動と同じ周波数の電磁波を加えると、
磁気共鳴がおきてプロトンがエネルギーを吸収します(図のA)。
どのくらい強力な磁場をかけるんですか。
幅がありますが、普通はFM放送と同じくらいの、約64メガヘルツの高周波磁場です。
次に、高周波磁場を切ると、プロトンは吸収したエネルギーを放出しながら元の状態に
戻ります(図のB)。このときプロトンが放出するエネルギーを微弱な信号としてとらえて
コンピューター処理し、断層画像をつくるというわけです。
健康な組織と病変のある組織とではプロトンの出すエネルギーが違うということですか。
はい。コマがしばらくは慣性で動いてやがて止まるように、電磁波を切るとプロトンの出す信号は
だんだん減衰します。病気の種類によって、この減衰の仕方が違うのです。
コップに入れた水はほかのものに束縛されませんから、揺らした後の波はあまり減衰しません。
このように、たとえばガン細胞は水の量がほかの細胞より多いので信号が減衰しにくく、
健康な細胞と区別できるのです。
●痴呆症などの診断にも
どんな利用法がありますか。
現在は主に断層像が得るのに使われ、人体の各部分の病巣(出血、腫瘍など)や、脳幹から脊髄までの
中枢神経系などの状態が鮮明に分かるようになってます。研究中のものでは、化合物の種類によって
核磁気共鳴の周波数がすこし違うことを利用して、体内の代謝物質を画像化する方法が期待されます。
さらに、神経細胞の興奮状態を調べる脳機能画像や温度分布画像は、脳腫瘍の手術などに
役立ち、血流の画像を得る血管画像は脳梗塞、心筋梗塞など、循環器系の病気の診断に効果を
発揮するでしょう。脳神経細胞の活動の状態が動きのある画像としてとらえられるようになり、
今まで不可能だった老人痴呆症や精神病の診断にも活用できると考えてます。